私たちは「三日坊主」という言葉をよく使います。ダイエット、勉強、運動、資格取得……。

始めたときはやる気に満ちているのに、気がつくと数日でやめてしまう。そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。

多くの人が「自分は意志が弱いから」と責めがちですが、実はこれは脳の機能による“当たり前”の現象でもあるのです。

脳は変化を嫌う器官です。

私たちの脳には「ホメオスタシス（恒常性維持機能）」があり、現状を保とうとする働きが備わっています。

新しいことを始めると、脳は「危険」や「負担」と認識し、元の習慣に引き戻そうとします。

これが“コンフォートゾーン”の力です。ですから、最初の数日でやめてしまうのは、単に「やる気がない」「根性がない」からではなく、脳があなたを守ろうとしているサインでもあるのです。
しかし、そんな脳の仕組みを超えて、寝ても覚めても夢中になり、自然に続けられる人たちがいます。なぜ彼らは途中でやめないのでしょうか？　それは「やりたいこと」「心から望むこと」に取り組んでいるからです。

やりたいことをやっているとき、人の脳は「報酬系」と呼ばれる神経回路が活性化します。

ドーパミンが分泌され、快感やワクワク感が生まれます。これが強力な“燃料”となり、脳は「これを続けたほうがいい」「これが自分の当たり前の世界だ」と認識を変えていきます。

いわば、脳があなたの新しい現実を“承認”してくれるのです。

たとえば、恋をしているとき。相手のことを考えずにはいられない、夜遅くまでメッセージを送り合ってしまう、朝起きたら真っ先に思い出してしまう。これも脳が「快感」と「意味づけ」を強化している状態です。仕事でも学びでも同じで、やりたいことに没頭しているときは努力が努力に感じられず、寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまいます。

では、どうすれば自分にとって「寝ても覚めても諦められないこと」を見つけられるのでしょうか。

ポイントは、「頭で考える」のではなく「心で感じる」ことです。世間体、周囲の期待、成功のイメージなど“外側の価値”に合わせて選んだものは、たとえ一時的に頑張れても長続きしません。

脳は「これ本当に必要？」と問い続け、最終的にやめる方向へ引っ張ります。
反対に、心の奥から「どうしてもこれがしたい」「やらずにはいられない」と思えるものは、脳のホメオスタシスをも“上書き”してしまいます。

脳は「これが新しい安全地帯だ」と理解し、行動が習慣に変わっていきます。こうなると、もう努力とか根性という感覚はなく、ただ「それをするのが当たり前」の状態になります。

実際に私自身も、「やらなければならない」ことは続きませんでしたが、「やりたい」と思えることは気づけば続いていました。

例えば、好きな本を読み続けること、心が動く人やテーマに没頭すること、夢中になって調べること。これらは誰に強制されたわけでもなく、自然に日課になっていました。気がつくと、脳が“その世界”を基準にし、努力ではなく“生き方”として定着していたのです。

ここで大切なのは、「やりたいこと」に気づく勇気と、自分に許可を出すことです。多くの人は「やりたいことはあるけど、自分には無理かもしれない」「時間がない」「お金がない」といった理由で、自分の心の声を封じ込めてしまいます。けれど、その瞬間、脳も「やっぱりやめておこう」と判断し、ホメオスタシスが強化されてしまいます。

逆に「やってみよう」「まず一歩動いてみよう」と決めたとき、脳は少しずつ新しい回路を作りはじめます。

最初は不安定でも、心の奥にある“情熱”がその不安定さを押し流し、やがて「これが当たり前」となる世界へと導いてくれるのです。
つまり「三日坊主」を超えるカギは、意志の強さではなく、“情熱”と“意味づけ”です。あなたが本当にやりたいこと、ワクワクすること、心が震えることに取り組むとき、脳はあなたの味方になり、やめるどころか「もっとやりたい」と促してくれます。

もし今、あなたが「続かない自分」を責めているなら、まずはその考えを手放してみてください。脳がそういう構造だからこそ、続かないことがあるのです。大切なのは「続かないこと」に焦点を当てるのではなく、「続けたくなるもの」「寝ても覚めても諦められないこと」に出会うことです。
そのためには、自分に問いかけてみてください。

「私は何をしているとき、時間を忘れるだろう？」
「どんなことなら、報酬がなくてもやりたいと思えるだろう？」
「これをしないと死んでも死にきれない、そう感じるものは何だろう？」
その問いに正直に答えられたとき、あなたの脳は変わりはじめます。やがて、三日坊主を超え、自然に行動が積み重なり、人生そのものが変わっていきます。

「三日坊主は脳の機能の問題、でも、やりたいことで進んでいくと寝ても覚めても諦められないから脳もそれが当たり前の世界になっていく」――。これは単なる理論ではなく、誰もが実践できる現実的な方法です。脳の仕組みを味方にし、自分の心が求める方向へ舵を切るとき、あなたの未来は確実に動き出します。